言葉紡ぎ

コンサル女子のひとりごと

日本人の宗教観がはらむ危険性

 

別の本を探しに新書コーナーに立ち寄ったら目にとまった本がありました。

 

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ペラペラとめくってみるとフランスが事例として紹介されており、思わず購入。

ページ数もそんなに多くなくあっという間に読み終えてしまいました。

 

まず簡単な感想を。

購入した当初、出版年を確認しておらず、昨今の情勢を受けてのものかと読み進めているとどうも出てくる年号が古い。そこでやっと確認すると2004年出版。既に10年以上も前からこの方はイスラム情勢に警鐘を鳴らしていたことに愕然とするとともに問題の根深さに絶望を覚えました。

ヨーロッパ政治を勉強していたこともあり、内容自体はすんなり入ってくるものでした。フランスの情勢も自分がまさに肌で感じていたことと一致していて、実地での研究を重視されているだけあって非常に丁寧に状況を捉えていると感じました。

まさにイスラム問題がこじれている現在、もう一度問題の背景を整理するのに役立つ良書です。今読んでも古さはなく、いかにこの10年間状況が改善してこなかったかを再認識しました。それどころか筆者が懸念していた方向に事態が進んでいることに悲しい気持ちになります。

 

 

この本を読み終えて、留学中に履修していた「政治と宗教」という授業の最終課題を思い出しました。私は「日本人の宗教観」というテーマでレポートを書きました。簡単にまとめると「日本人は宗教に対して寛容なのではなく無関心だ。」という内容のものです。日本人はクリスマスなど、他宗教のイベントを積極的に取り入れているように見えますが、結局のところ自分たちに都合の良いものだけをピックアップしたにすぎません。取り入れられたイベントは一年のサイクルに組み込まれ、宗教的な背景は関係なくみんながやっているから、なんとなく習慣としてやっている側面が強い。

 

本書から伺えたのは、国によって背景は違えど「無関心」が歪んだ認識を生み出していること。ここでいう「無関心」とは「相手を知ろうとしないこと」。相手を知ろうともせず、勝手なイメージでレッテルを貼る。そしてそのイメージだけが一人歩きし憎悪を生み出す。

 

これって本当にヨーロッパだけの問題でしょうか?

日本では周囲と同じことをしている限りは特に何も言われませんが、一度目立つ行為をするようになると周りから白い目で見られます。そしてみんなと違うことをやっているから悪いという風潮になりがちです。ヨーロッパの問題と構造が似ていませんか?

 

東京ではだいぶ外国人を見かけることが多くなりました。それでも西欧諸国に比べればまだまだ多様性は低く、ヨーロッパで起きている問題が今すぐ発生するとは思いません。しかし今後日本に定住する外国人は増えていく可能性が高い。その時にヨーロッパと同じ轍を踏まないように、日本人の意識を変えていく必要がありそうです。

無関心がまた新たな悲劇を生まないことを切に願っています。